眼球打撲とは
眼球打撲とは、ボールが目にぶつかるなどして眼球が損傷した状態です。眼球は常に外界に露出した状態の器官であり薄いまぶたでしか守られていないため、目をつぶっていてもボールが当たる、転倒して目をぶつける、不意に子どもの手が当たるなどのちょっとした衝撃でも損傷を起こす恐れがあります。
眼球打撲の自覚症状
眼球打撲を起こして以下のような症状が現れた際には、できるだけ早く眼科を受診して検査を受けましょう。また、自覚症状が現れていない場合でも、目に強い衝撃があった際には念の為検査を行っておくことが大切です。
目をぶつけた際に注意すること
目に強い衝撃があった場合には、冷水で浸したハンカチやガーゼをまぶたの上に優しく当てて冷やしましょう。また、眼鏡のレンズの破片が目に混入して出血を起こしている場合には、目を擦らずに速やかに眼科を受診してください。
眼球打撲によって起こる主な病気
以下は、眼球打撲の際に起こる可能性のある代表的な疾患です。
網膜剥離
網膜剥離とは何らかの原因によって網膜に穴や裂け目ができてしまい、網膜が剥がれていく病気です。主な症状は、視界の一部が見えづらいなどの視覚障害や光が走って見える光視症、実際には存在しない黒い糸くずのようなものが見える飛蚊症の増加などが挙げられます。
眼球破裂
非常に強い力で目を打撲すると、白目(強膜)が裂けてしまい、そこから目の内容物が外に脱出してしまいます。白内障手術を経験している方は白内障手術時の傷口が裂けることが多く、手術経験のない方は目を動かす筋肉の付着部が裂けてしまうことが多いといわれています。緊急手術を必要とする重篤な状態です。残念ながら、手術をしても視力の回復が見込めない場合もあります。
外傷性白内障
白内障とは、目のレンズの役割を担っている水晶体という組織が濁る病気です。主な原因は加齢や他の病気の合併症などになりますが、眼球打撲によって外傷性白内障を引き起こすこともあります。
主な症状は、視力低下や視界がかすみ、光をまぶしく感じるなどが挙げられます。
角膜外傷
角膜外傷とは、何らかの原因によって角膜が障害を起こした状態の総称です。角膜表面のみに障害が起きている場合を角膜びらん、角膜の深部まで傷が及んでいる場合を角膜潰瘍と言います。完全に穴があいてしまった状態は角膜穿孔であり緊急手術が必要になります。
主な症状は、目の痛みやゴロゴロとした違和感・異物感、目の充血、涙が多く出るなどが挙げられます。
結膜裂傷
結膜裂傷とは、白目部分である結膜が裂傷を起こした状態の病気です。
切れている大きさによっては縫合が必要になります。
前房出血
前房出血とは、外傷などによって角膜と虹彩の間の前房内に出血し血液が溜まった状態です。
前房出血は一度出血が止まっても1週間以内に再出血を起こす恐れがあるため、しばらくの間は激しい運動などは控える必要があります。
また、出血の影響で視力低下や眼圧上昇を認める場合が多いです。
低眼圧症
打撲の影響で、眼の中の水(房水)を生成する毛様体という組織の房水生成能力が低下してしまい、眼圧が極端に低下してしまう状態です。軽度の場合は自然に回復しますが、重度の場合は低眼圧黄斑症や網脈絡膜剥離を発症して、視力低下や歪みを認める場合があります。
外傷性虹彩毛様体炎
虹彩毛様体炎は一般的にぶどう膜炎と呼ばれているもので、外傷性虹彩毛様体炎とは目への強い衝撃によって虹彩とその隣の毛様体に炎症を引き起こす病気です。
主な症状は目の痛みや目の充血、視界のかすみなどが挙げられ、進行すると虹彩や毛様体以外の組織に炎症が波及したり、白内障・緑内障を合併する恐れもあります。
水晶体脱臼
水晶体脱臼とは、目への強い衝撃などによって水晶体を支えるチン小帯という組織が断裂し、水晶体が脱臼する病気です。これにより、水晶体が適切な位置を保てなくなり、近視・乱視・複視などの屈折異常を引き起こして視力が低下します。
なお、水晶体が完全に脱臼している状態を完全脱臼、完全に脱臼してしない状態を亜脱臼と分類します。水晶体の摘出と眼内レンズの強膜内固定術が必要になります。
眼窩底骨折
眼窩底骨折とは、目への強い衝撃などによって眼球を覆う骨(眼窩)が骨折した状態です。眼窩下壁と内壁(目と鼻の間)が骨折しやすく、その際の主な症状は、上方向を見ることが困難になる上転障害や眼球陥没、ものが二重に見える(複視)などが挙げられます。20歳未満の方は骨折部に筋肉が挟まってしまうことがあり、その場合は緊急手術が必要になります。吐き気を伴っている場合は注意が必要です。
網膜振盪症
網膜振盪症とは網膜が乳白色に濁って浮腫んでしまう病気です。一般的に網膜の周辺部に生じるため自覚症状に乏しいですが、多くの場合は数週間程度で自然治癒します。しかし、網膜の中心部で網膜振盪症を起こした場合には、一時的に視力低下や歪みの症状を引き起こします。
外傷性視神経炎
外傷性視神経炎とは、目への強い衝撃などによって目と脳をつないでいる視神経が障害を起こす病気です。主な症状は、視力低下や視野の一部が見えづらくなる視野障害などが挙げられます。視神経が通るトンネル状の骨(視束管)の骨折がある場合は非常に予後は不良になります。
眼球外傷の検査
眼球外傷の検査では、視力検査や眼圧検査の他、眼底部の撮影検査や精密検査を実施して状態を確認します。また、ものが二重に見えたり特定の方向を見ることが困難な状態の場合には、斜視検査を行うこともあります。骨折や眼球破裂が疑われる場合はCTやMRIが必要になる場合もあります。
眼球打撲の治療法
眼球打撲の治療は、症状が軽度の場合には目薬や軟膏などの薬物療法によって改善を図ります。一方、症状が重度の場合にはレーザー治療や手術治療を検討することもあります。
また、眼球打撲を起こした際の応急処置としては、冷水で浸したハンカチやガーゼなどを目に優しく当てて目を冷やすようにしましょう。眼球打撲は、発症直後に無症状でも数時間〜数日後に症状が現れることがあるため、軽い衝撃だと思った際にも適切に応急処置を行うことが大切です。
眼球打撲は自己判断で放置すると重篤な後遺症を引き起こす恐れがあります。そのため、応急処置後はできるだけ早い段階で眼科を受診し、検査や治療を行うようにしましょう。