お子様にこんな症状はありませんか?
- 目を細めて物を見る癖がある
- 顔を傾けて物を見る癖がある
- 目を擦る癖がある
- 黒目が中心に位置していない
- 目の形状や大きさに左右差がある
- 涙や目やにが多い
- 眩しそうにしていることが多い
子どもは、自身に目の異常が起きていても気づかないことが多く、また自身の異常を上手に説明することが苦手です。そのため、保護者様は普段から子どものものの見方や目の状態を注意深く観察するよう、心がけましょう。
眼科検診で診ていること
学校健診の眼科検診では、主に視力検査や眼位検査、外眼部検査を実施します。中には色覚検査を実施することもあります。
視力検査
学校健診で行われる視力検査は370方式という簡易的なもので、主に学校の先生や養護教諭によって実施されます。
370方式とは?
370方式とは、ランドルト環というC型のマークを使って短時間で視力の状態を確認する簡易的な視力検査です。
学校生活に必要な視力としてA(1.0以上)、B(0.7以上1.0未満)、C(0.3以上0.7未満)、D(0.3未満)の4段階で評価します。
視力 | 判定 |
A (1.0以上) | 教室の一番後ろの席からでも黒板の文字を問題なく読める視力です。 |
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B (0.7 以上 1.0 未満) | 教室の中央〜一番後ろの席からでもほとんどの黒板の文字を読める視力ですが、小さい文字の場合は読みにくい場合があります。 |
C (0.3 以上 0.7 未満) | 教室の中央〜やや前の席でも黒板の小さな文字は半分ほどしか読めない視力です。 |
D (0.3 未満) | 教室の一番前の席でも眼鏡やコンタクトレンズがないと黒板の文字を読むことが困難な視力です。 |
視力検査の判定について
片方の目がA判定でも、もう片方の目がC判定など左右の視力差が2段階以上ある場合は、できるだけ早い段階で眼科を受診してください。放置すると、良い方の目の視力も徐々に低下していく恐れがあります。
また、B判定であった場合も、その後視力が低下して近視になる可能性があります。近視になると眼鏡やコンタクトレンズの装用が必要になるだけでなく、中には将来的に網膜剥離や黄斑変性、緑内障などの重篤な目の病気を引き起こす原因となる恐れもあります。
近年、子どもは、生活習慣や生活環境の変化から外で遊ぶよりも自宅で遊ぶ機会が増えたことにより、以前に比べて近視を発症する割合が増加傾向にあります。一般的に近視は20歳ごろまで進行すると言われておりますので、普段から予防を心がけることが大切です。
子どもの近視の治療には、マイオピン点眼が有効です。当院でも扱っておりますので、お気軽にご相談ください。また、当院では近視を予防するための生活習慣の改善指導も行っております。
当院は眼鏡の処方が可能
当院では、一般的な視力検査に加えて、視能訓練士の資格を持つ専門のスタッフが患者さん一人ひとりの目の状態やライフスタイル等を考慮し、適切な眼鏡の処方を行います。
近視の進行を遅らせる「マイオピン®(低濃度アトロピン)」
マイオピン®とは、子どもの近視進行の軽減目的にシンガポール国際眼科センターの研究に基づいて開発された、点眼タイプの進行予防薬です。マイオピン®の主な対象者は、4~12歳の子どもや、軽度〜中等度の近視症状が見られる子どもとなります。
マイオピン®は副作用が少なく、1日1回点眼することで、近視の進行を30~60%抑制する効果が期待できます。
子どもに気になる目の症状が現れている場合には、お気軽にご相談ください。
※自由診療(自費診療)です
眼位検査
眼位検査とは、両目が適切な場所に位置しているかを調べる検査です。これにより、斜視を起こしていないかどうかを確認することができます。
斜視とは、片方の目の位置が中心からずれていることにより、もう一方の目と視点が合わない状態の病気です。ずれている視線の方向によって、内斜視・外斜視・上下斜視に分類されます。主な原因は、生まれつきの先天的なものの他、何らかの病気によるものや筋肉・神経の異常、目の外傷などが挙げられます。
斜視は見た目の問題だけでなく、両目の視点がずれてしまうことで対象物の距離感や立体感の認識力が低下し、放置すると弱視を引き起こす恐れもあるため、注意が必要です。
外眼部検査(結膜炎、まつ毛・まぶたの異常、角膜の異常に関する検査)
外眼部検査とは、目の周りの器官を調べる検査です。具体的には、まぶたやまつ毛、角膜などの異常や病気を発見する際に行われます。
子どもに多く見られる病気として、逆さまつ毛(睫毛内反や眼瞼内反)や結膜炎が挙げられます。逆さまつ毛とは、まつ毛が眼球の方向に反り返って生えることで角膜を傷つけてしまう病気です。また、結膜炎は何らかの原因によって目が真っ赤に充血する病気です。結膜炎には花粉症などによるアレルギー性結膜炎や感染性結膜炎(細菌・ウィルスなど)があり、放置すると角膜混濁などを引き起こす恐れがあるため、原因に応じた治療を行う必要があります。
色覚検査
色覚検査とは、自身が正しく色を識別できているかどうかを確認する検査です。人間は、網膜の中にある錐体という細胞によって対象物の色を認識しています。しかし、この錐体に異常が生じると、ものの色を正しく識別することができない色覚異常という状態となります。
色覚異常を起こしていたとしても通常の日常生活にはそれほど支障はありませんが、電車の運転士やパイロット、警察官など色覚異常を起こしていると就くことのできない職業も一部あるため、ご理解が必要です。
色覚検査は学校検診では任意の検査となります。
なお、当院では石原色覚検査表国際版38表やパネルD―15を使用して色覚検査を実施しています。
学校の眼科検診で発見できる目の異常・病気
近視
近視とは、屈折異常によって目に入ってきた光が網膜の手前で像を結んでしまう状態の病気です。これにより、近距離の対象物はよく見える一方で、遠距離の対象物が見えづらくなります。
主な対処法は、マイオピン®という点眼薬によって近視の進行を抑制したり、眼鏡やコンタクトレンズを装用して視力を矯正する方法などが挙げられます。手術ではレーシックやICL手術(いずれも自費診療)が適応になる場合があります。
遠視
遠視とは、屈折異常によって目に入ってきた光が網膜の奥で像を結んでしまう状態の病気です。これにより、近距離の対象物を見るためにピント調節をたくさん行う必要があります。どこにもピントが合っていない状態になるため、疲れ目の原因になります。また、小児の強い遠視は弱視や斜視の原因にもなるため注意が必要です。
主な対処法は、眼鏡やコンタクトレンズを装用して視力を矯正する方法などが挙げられます。
乱視
乱視とは、屈折異常によって目に入ってきた光が網膜のどの部分にも像を結ばない状態の病気です。主な症状として、視力低下や物が二重に見えるなどが挙げられます。
主な対処法は、眼鏡やコンタクトレンズを装用して視力を矯正する方法などが挙げられます。乱視の中にはハードコンタクトレンズでなければ矯正ができない、不正乱視という乱視もあります。
眼瞼内反症・睫毛内反症(さかさまつ毛)
眼瞼内反症とは一般的に逆さまつ毛と呼ばれている病気で、何らかの原因によってまつ毛が逆さに反り返っている状態です。まつ毛が内側に反りかえることで、毛先が角膜に触れることで角膜を損傷して乱視を引き起こしたり、損傷部から感染を起こすなどの症状を引き起こします。
斜視
斜視とは、二つの目のいずれかの眼球の位置がずれてしまうことで、片方の目の視線が対象物から外れてしまう状態の病気です。視線がどの方向にずれているかによって、内斜視、外斜視、上斜視、下斜視と分類されます。
斜視は見た目の問題だけでなく、両目で見た時に二重にみえる症状(両眼性複視)を認めます。また、対象物を立体的に認識できなかったり距離感が掴めなくなるなどの視覚障害を引き起こすことがあります。子どもの場合は弱視を引き起こす恐れもあるため、注意が必要です。
斜視の対処法としては、眼鏡による矯正や視能訓練などになります。しかし、これらによって十分な改善効果が見られなかった場合には、手術を検討することもあります。
弱視
弱視とは、何らかの原因によって視力の成長障害が起きている状態です。主な原因としては、小児期の斜視や遠視・乱視などの屈折異常の他、生まれつきの先天的な病気(先天性白内障など)が挙げられます。視力の成長は8歳頃で止まってしまい、それ以降に治療をしても視力の改善は期待できません。
弱視は大人になってから眼鏡などを装用しても視力を矯正することはできないため、小児期のうちに早期発見し、眼科で専門的な治療を行う必要があります。
先天性色覚異常
先天性色覚異常とは、生まれつきの遺伝子の異常によって対象物の色を正しく識別することが困難な先天性の異常で、現時点では明確な治療法は確立されておりません。先天性色覚異常になると、赤・緑・茶、ピンク・水色・灰色などの色やその組み合わせを正しく識別するのが困難になります。赤緑色覚異常が多く、日本人では男性の約5%、女性の約0.2%に認めます。遺伝形式上、男性に多い疾患です。子どもの頃は色を間違えることが多いですが、成長に伴い経験・学習によって、間違いは減っていくことが多く日常生活に支障をきたすことは少ないようです。
現在では先天性色覚異常に対する社会の理解も進んだことから、自動車の運転免許の取得は可能です。パイロットや警察官などの一部の職業には制限がある場合があります。
見えづらそうではないのに、視力を指摘された
心因性視覚障害について
心因性視覚障害とは、検査や診察を行っても特に目の異常が見つからないにも関わらず、一時的な視力低下を認める病気です。
一般的に7歳~12歳の女児に多く見られ、主な原因は学校生活・家庭生活への不安やストレス、親の目を引きたい願望、眼鏡をかけたい願望などの心的要因が関与していると考えられています。
心因性視覚障害の特徴
心因性視覚障害の多くは7歳~12歳の女児に多く見られ、同世代の男児の約2倍という報告があります。器質的異常がないことから一見仮病と思われがちですが、実際に一時的な視力低下を起こすために明確な病気となります。
心因性視覚障害の検査・診断
心因性視覚障害の検査では、通常とは異なる特殊な視力検査法を実施します。眼鏡を処方する際に使用される特殊な器具を使用し、様々な度数のレンズを次々に交換しながら最終的には患者さんには内緒で度の入っていないレンズを装着し、視力を測定します。この時に視力が1.0以上を計測したら、心因性視覚障害と診断されます。
視力検査の他では、視野検査や色覚検査を実施します。心因性視覚障害の患者さんの場合、実際に視野検査では水玉状に視野が欠損したり検査中に螺旋状に徐々に視野が狭くなるなどの症状を引き起こすことがあります。また、色覚検査においても、約50%の患者さんが正常色覚とも色覚異常とも異なるパターンの結果になると報告されています。
心因性視覚障害の原因の多くは心的要因と考えられていますが、中には他の病気が原因で症状が現れている可能性もあります。そのため、子どもに気になる症状が現れている場合には仮病と決め付けたり自己判断で放置せずに、眼科を受診して精密検査を行うことが大切です。
心因性視覚障害の治療
心因性視覚障害の原因の多くは心的要因と考えられているため、改善には子どもの心的ストレスを取り除いたり、悩み事などについて親身に相談に乗ってあげることが大切です。これらの取り組みを行っても十分な改善効果が見られない場合には、心療内科や精神科を受診して専門医による診察や治療を行う必要があります。