涙が止まらない
涙には目に異物が混入するのを防ぐ役割の他、目に溜まった異物や老廃物を排出させる、目の乾燥を防ぐ、目に酸素や栄養を供給するなど様々な役割があります。
しかし、涙が必要以上に流れる場合や、涙が止まらない、悲しくないのに涙が溢れるなどの症状が現れている場合には何らかの病気が隠れている可能性があります。
涙の役割
涙には異物や乾燥から目を守るバリア機能や、目に酸素や栄養を供給する役割があります。また、涙に含まれるリゾチームという成分には殺菌作用があるため、感染から目を守ることができます。その他、涙には角膜にできた傷を治癒する効果もあります。
このような様々な役割を担う涙はまばたきによって目全体に行き渡るよう、調整されています。
涙が出続ける・止まらない原因
異物の混入
目にゴミやほこりなどの異物が混入すると、異物を排除するために反射的に涙が分泌されます。しかし、逆さまつ毛などによって目が刺激され続けると、必要以上に涙が分泌され続けます。逆さまつ毛は乳児にも多く見られる病気であるため、お子さんの目の状態を注意深く観察するようにしましょう。
花粉やハウスダストによるアレルギー症状
アレルギー性結膜炎を発症すると、涙が多く出ることがあります。アレルギー性結膜炎には、花粉などのアレルゲンによって特定の時期だけ発症する季節性アレルギー性結膜炎と、ハウスダストやダニなどのアレルゲンによって1年中発症する通年性アレルギー性結膜炎の2種類があります。
目の乾燥
近年では、パソコンやスマートフォンの長時間使用や扇風機・エアコンによる部屋の乾燥などの環境の変化によって、目が慢性的に乾燥を起こす機会が増加しています。目が乾燥すると、それを補うために涙の分泌量が増加します。
アイメイクなどの化粧品
涙が止まらない原因として、化粧品の使用が挙げられます。アイラインなどの化粧品の粉が目に入っていたり、化粧品の成分に対してアレルギーを起こしで眼瞼の接触性皮膚炎を発症していると涙の分泌が多くなります。また、メイクの際にコンタクトレンズに化粧品が付着することも涙を過剰に分泌させる原因となります。その他では、アイラインやマスカラによってまぶたのマイボーム腺が詰まったり炎症を起こすと、涙の油分が減少して涙が蒸発しやすくなり、ドライアイを引き起こすことで涙の分泌が過剰になることもあります。
まつ毛エクステ
まつ毛エクステの際に接着剤の成分が目に混入すると、涙が止まらなくなることがあります。通常は2~3日程で自然に排出されて症状は治まりますが、長期間症状が継続している場合にはまつ毛エクステそのものが目の表面に触れている可能性があるため、目の状態を確認してみましょう。また、このような状態はつけまつ毛でも発生することがあるため、合わせて注意しましょう。
上記のような対処法をご自身で行っても症状が治まらない場合には、一度当院までご相談ください。
涙が止まらない時に疑われる病気
細菌性結膜炎
細菌性結膜炎とは目に細菌が感染することで引き起こされる結膜炎です。原因菌は主に黄色ブドウ球菌などが多いとされています。主な症状は涙目や目の充血、目の痒み、ゴロゴロとした違和感・異物感などの他、特に黄色い目やにが多く出る特徴があります。
また、乳幼児や高齢者など抵抗力の低い患者さんの場合は症状が慢性化することがあり、注意が必要です。
ウイルス性結膜炎
ウイルス性結膜炎とは一般的にはやり目と呼ばれている病気で、目にウイルスが感染することで引き起こされる結膜炎です。主な原因となるウイルスはアデノウイルスになります。主な症状は、涙目や目の充血、目の痒み、目やにが異常に多く出るなどになります。
また、アデノウイルスによる感染症には一般的にプール熱と呼ばれている咽頭結膜熱もあります。咽頭結膜熱の場合は、発熱やのどの痛み、目の痒み、充血、目やに、吐き気、倦怠感、下痢などの症状が現れます。
ドライアイ
ドライアイとは、目を酷使することで目が慢性的に乾燥する病気です。主な原因は、パソコンやスマートフォンの長時間使用やエアコンの長時間使用による部屋の乾燥などが挙げられます。
また、慢性的に目が乾燥して目を保護する涙の量が減少することで、一時的に多くの涙が出る反射性分泌を起こすこともあります。
アレルギー性結膜炎
アレルギー性結膜炎とは、花粉やハウスダストなどのアレルゲンが目に混入することで様々なアレルギー症状を引き起こす病気です。主な症状は目の痒みや涙目などの他、白く粘性のある目やにが多く出る、白目の腫れや浮腫などが挙げられます。
アレルギー性結膜炎には、花粉などによって特定の季節のみに発症する季節性アレルギー性結膜炎と、ハウスダストなどによって1年中発症する通年性アレルギー性結膜炎の2種類があります。
コンタクトレンズトラブルによる角膜疾患
コンタクトレンズを不衛生に管理したり、不適切に使用すると、刺激に敏感な角膜が傷付いて涙目などの症状を引き起こします。コンタクトレンズが原因の主な病気としては、傷付いた角膜から細菌やウイルスが侵入する角膜感染症や、角膜上皮障害などが挙げられます。
鼻涙管閉塞・鼻涙管狭窄
鼻涙管狭窄や鼻涙管閉塞とは、目から鼻までの涙の通り道である涙道が炎症を起こすことで狭窄・閉塞し、大量の涙が溢れ出る病気です。主な原因疾患として、加齢、風邪や副鼻腔炎などが挙げられます。また、過去に鼻の手術や抗がん剤治療を行った場合にも発症することがあります。
涙嚢炎
涙嚢炎とは主に鼻涙管狭窄や鼻涙管閉塞が進行することで引き起こされる病気で、狭窄や閉塞を起こした涙道に細菌が感染して化膿した状態です。主な症状は鼻周辺の痛みや腫れなどですが、涙目や目の充血、目やにが多く出るなどの目の症状を併発することもあります。更に病状が進行すると、目から膿が出たり、発熱を起こすこともあります。
顔面神経麻痺
顔面神経麻痺とは何らかの原因によって顔の神経に障害が起き、顔の片側が突然麻痺する病気です。主な症状は、口角や頬が垂れ下がるなどの他、まぶたが閉じなくなる、涙が出なくなる、涙が過剰に出るなどの目の症状を引き起こすこともあります。
兎眼(とがん)
兎眼は、顔面神経麻痺などの影響でまぶたが完全に閉じなくなってしまう状態です。瞬目(まばたき)をしても完全に目を閉じることができないため、角膜(黒目)や結膜(白目)が乾燥することで、目の表面に傷や炎症が生じ、痛みや視力障害、充血、流涙などの症状を引き起こします。
涙が出続ける・止まらない時の対処法や治療
悲しい、嬉しいなどの感情でない時にも涙が溢れたり涙が止まらないなどの症状が現れている場合には、何らかの病気の疑いがあります。
以下は、このような症状が現れた際の対処法となります。
異物の除去
目にゴミなどの異物が混入すると、涙が止まらなくなることがあります。応急処置としては、シャワーなどの綺麗な流水を優しく目に当てて異物を除去できるか試してください。流水で洗浄しても症状が治まらない場合には、とげなどが角膜に刺さっている恐れがあり、その場合には眼科医が顕微鏡を使って除去する必要があります。自己判断で無理に除去しようとすると感染症を引き起こしたり後遺症が残る恐れもあるため、できるだけ早く当院までご相談ください。
点眼液(目薬)
涙が止まらない原因がドライアイの場合には、点眼薬の使用によって症状が改善することがあります。主な点眼薬は、人工涙液やヒアルロン酸製剤、ムチンを産生するもの、水分を分泌促進するものなどが挙げられます。
また、細菌性結膜炎が原因の場合には抗生物質入りの点眼薬が、アレルギー性結膜炎が原因の場合にはステロイド点眼薬などが有効です。
内服薬
内服薬によっても涙目の症状を改善できる場合があります。細菌感染によってまぶたが腫れている場合には抗生物質の内服薬が、アレルギーによって目の痒みなどを引き起こしている場合には抗アレルギー作用のある内服薬などが有効です。
コンタクトレンズ装着の見直し
コンタクトレンズの不適切使用や不衛生管理などが原因で涙目を引き起こすことがあります。長年コンタクトレンズを使用している患者さんの中にも誤った方法で使用・管理している場合があるため、注意が必要です。
また、コンタクトレンズを装用している場合には、眼科にて定期的に目の状態を確認することも大切です。
涙が止まらない症状は早期に受診するようにしましょう
涙が止まらない症状を引き起こす原因には、異物の混入やドライアイ、結膜炎、角膜炎、細菌感染など様々なパターンがあります。涙が止まらないと仕事や学業などに支障をきたして生活の質が低下する恐れがありますので、気になる症状が継続している場合には当院までお気軽にご相談ください。